「第三者名義で被告人がレンタカーを使用していた事実から直ちに違法捜索を理由とした被告人の証拠排除の申立適格が否定されるわけではないと判断された事例――Byrd v. United States, 138 S.Ct. 1518 (2018)」判例時報2399号(2019年)127頁以下が公刊されました。
被告人の交際相手が、転貸を禁じるレンタカー契約をレンタカー会社と締結したにもかかわらず、被告人にレンタカーを転貸し、被告人が当該レンタカーを運転していたところ、警察官からの捜索を受け、違法薬物が発見された事案です。この事案で、被告人側が合衆国連邦憲法第4修正が求める要件である「相当な理由」を欠いた違法捜索だったとして、押収された薬物の証拠能力を否定すべく、違法収集証拠排除法則を主張しました。これに対して、第1審、控訴審ともに被告人にはプライバシーの合理的期待がなかったため、そもそも証拠排除を申し立てる適格性がないと判断しました。これを受けて、被告人側が連邦最高裁に裁量上告を申し立てたのが、本件です。
連邦最高裁の法廷意見は、全員一致で、契約違反であるレンタカーの転貸が、それ自体で直ちにプライバシーの合理的な期待を失わせるわけではなく、したがって証拠排除の申立適格が失われるわけでもない旨を説示し、原判決を破棄して差し戻しました。もっとも、「相当な理由」が本当になかったのか否かなどの諸点は、差戻審で審理されるべきだとして、連邦最高裁は立ち入って判断していません。
判旨を長く紹介した結果、紙幅が圧迫され、脚注を大幅に削らざるを得ませんでした。その点を含めて、いくつか心残りがあるのですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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