その他:アンソニー・ルイス『ギデオンのトランペット』の紹介

自由と正義71巻9号(2020年11月号)で、アンソニー・ルイス著・田鎖麻衣子訳『ギデオンのトランペット』(現代人文社)の紹介文を書く機会がありました。

同書は、州における重罪の刑事事件の被告人には、弁護人が選任されなければならない旨を説示したことで知られる、ギデオン判決(Gideon v. Wainwright, 372 U.S. 335 (1963))をめぐる物語です。同書の見どころは、掲載された紙面に短くまとめたので、ここでは繰り返しませんが、読みやすい訳文で、一気呵成に読めました。翻訳を丁寧に練られたのだろうと思います。

立場を超えて、多くの人々が、弁護人選任権を実質的に保障するために行動して実現する様子は、爽やかな読後感を与えてくれます。

追補としてここに書くとすれば、私は不勉強でこの本を読むまで知らなかったのですが、プロセス憲法理論で知られるジョン・H・イリィ(John Hart Ely)が、まだ研究者となる前に、弁護人フォータスをサポートしていました。この本では、イリィが活躍する様子も描かれています。

また、紹介文中でも触れましたが、ギデオン判決に至る連邦最高裁での口頭弁論を、Oyez(Gideon v. Wainwright)で文字起こしとともに聴くことができます。この本を片手に聴いてみても、よいのではないでしょうか(便利な世の中になったものです)。音声を聴いていると、フォータスは非常に落ち着いた口調で口頭弁論に臨んでいて、本書を読むときにも想像力が刺激されるのではないかと思います。