「重罪事件の刑事陪審における有罪評決が10対2で足りるとする州法を憲法第6修正違反とした事例――Ramos v. Louisiana, 140 S.Ct. 1390 (2020)」判例時報2456号(2020年)144頁以下が、公刊されました。
ルイジアナ州は、重罪の刑事事件において陪審評決を行う際に、10対2の多数決による有罪評決を認めていました(2019年に全員一致評決を求める形になりましたが)。被告人側は、2016年にルイジアナ州の刑事陪審において全員一致評決によらない有罪評決で有罪判決が宣告されたことが、合衆国連邦憲法第6修正の保障する、陪審審理を受ける権利を侵害するものであり、全員一致評決の保障が第14修正を通じて州にも及ぼされるべきだとして、連邦最高裁で争った事件です。
法廷意見は、連邦最高裁判事の党派を超えて入り乱れた形で、部分的に同調する形で構成されており、判旨を整理すること自体に手間がかかりました。その結果、本来期待される文字数を超えてしまい、編集担当の方には迷惑をかけてしまいました。
しかし、連邦憲法がどこまで州に組み入れられるかについて、おそらくはアメリカの憲法の教科書の記述の変更を迫ることになる判決なので、本判決の重要度は高いものだと思います。連邦憲法が州に組み入れられない数少ない例外の1つが、本判決により消失したことになるからです。
また、刑事手続の観点からみても、有罪判決の要件として裁判官等の全員一致を要しないとしている日本の刑事訴訟(裁判所法77条1項、裁判員法67条1項)との関係で、本判決は注目に値するものだと思います。
宜しくお願い申し上げます。
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