季刊刑事弁護115号の企画

季刊刑事弁護115号で以下の2つの企画にかかわりました。

(1)特集「弁護士事務所の捜索差押と押収拒絶ーー東京地判令和4・7・29の検討」

いわゆるゴーン事件と関連して、法律事務所が捜索される事件がありました。この事件では、押収を弁護士が明確に拒絶したのですが、それにもかかわらず捜査機関側が法律事務所に立ち入り、捜索することができるかが問題となりました。この事件に関する賠償請求訴訟が提起され、判決が示され、上記捜索が押収拒絶権の趣旨に違反したものだと判断されました(が、国賠法の適用上の違法は否定されました)。少なくとも、刑訴法上の捜索の違法性は認定されたといえます。

この判決を受けて、(1)この判決における訴訟活動を確認する河津博史先生(弁護士)の事件報告レポート、(2)この訴訟の中で提出された後藤昭先生の意見書、(3)弘中惇一郎先生、河津博史先生、後藤昭先生、門野博先生をお迎えしての座談会を内容とした特集を組みました。座談会では司会をさせていただきましたが、今回収録しきれなかった箇所も含めて、いろいろと問題意識を喚起されるところがありました。私自身が楽しく仕事をさせいてただきましたが、読者もその感覚を共有できれば嬉しく思います。

(2)特集「司法面接を問う」

笹倉香奈さんとともに企画をさせていただきました。と言っても、私は一部執筆者の選定・依頼、各論考の内容確認と一部について若干コメントをしたにとどまります(上の特集の方で手一杯だったという事情もあります)。笹倉さんはじめ執筆者・座談会参加者の方々のおかげで、充実した内容の特集になったものと思います。

司法面接的な手法で採取された供述の証拠能力に関しては、刑事訴訟法改正が国会を通ったため、今後はより重要な問題になっていくと思います。この特集が議論を喚起するものであれば、ありがたく思います。

季刊刑事弁護の編集委員を10年間勤めさせていただきましたが、今号の担当を以て退任させていただきました。長い間お世話になった編集部の方々や他の編集委員の先生方、そして執筆や座談に応じてくださった方々に、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。