アビー・スミスほか編著・村岡啓一監訳『なんで、「あんな奴ら」の弁護ができるのか?』(現代人文社)を紹介する、ごく短い文章を書きました。「自由と正義」2018年6月号に掲載されました。800字という紙幅なので、本書についてごくごくわずかのことしか書けなかったのですが、少しでも本書を手に取る方々が増えれば、と思いつつ紹介しました。
15人のアメリカの刑事弁護人たち(1人は検察官)が、刑事弁護がなされるべき理由を、それぞれ熱い文章を寄せています。表題は『How can you represent those people?』となっているところを、訳者の方々は悩んだ末に、「あんな奴ら」と訳しています。他方で、「people」は合衆国憲法でも「We the people of the United States」という形で用いられているとおり、同胞としての人民というニュアンスもありそうです。本書に寄稿している弁護士たちに共通しているのは、犯罪を犯した者(あんな奴ら)であっても、同胞たる人民なのだ――という価値観が基盤になっている。本書からは、そんなことを強く感じました。
日本の弁護士の方々の中にも、様々なバックグラウンドを抱えつつ、誇りを持って刑事弁護に取り組んでいる方々が多いと思います。本書のように、なぜ刑事弁護をできるのか、という問いへの回答を発し続けることは、刑事弁護の価値を社会で共有するためにも、日本でも必要なことなのかも知れません。
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