葛野尋之・王雲海編『刑事訴訟における公判中心主義』(成文堂)が刊行されました。
中国人民大学と一橋大学の交流事業の一環として、双方の大学を幹事担当として中国・日本の刑事訴訟法の研究者が参加する形で、刑事訴訟法に関する研究会を2017年度以降、3回にわたり実施しています(経緯については本書の「はしがき」に記されています)。2019年度については、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、実施を延期し、オンラインで2021年3月に実施するに至りました。本書は、第3回の報告とコメントの内容を収録したものとなります。
統一テーマとして、「刑事訴訟における公判中心主義」が設定されました。中国側から、認罪認罰従寛制度(陳衛東氏)、弁護権保障(顧永忠氏)、公判前会議制度(熊秋紅氏)、人民陪審制度改革(孫長永氏)、組織犯罪事件の審判分離(龍宗智氏)について報告がなされました。日本側からは、刑訴法改正と公判中心主義(後藤昭氏)、被疑者取調べ録音録画媒体の実質証拠利用(渕野貴生氏)、公判前整理手続(斎藤司氏)、裁判員裁判(緑)、視覚的補助ツールの利用(田淵浩二氏)について報告がなされました。これら報告に対して、卞建林氏、水谷規男氏、石田倫識氏、宋英輝氏、姚莉氏、三島聡氏、黒澤睦氏、葉青氏、王敏遠氏、本庄武氏がコメントを行いました。
本書では、これらに加えて、裁判員裁判の事実認定についての論稿(青木孝之氏)も追加されるとともに、編者による公判中心主義の意義に関する論説(葛野氏)と中国の審判中心主義の展開に関する論説(王氏)が付されております。
私の報告内容は、「裁判員裁判の運用状況と評価――公判中心主義の観点から」一橋大学刑事法部門編『裁判員裁判の現在』(現代人文社、2021年)の内容の抜粋にとどまりますが、特に中国側の報告内容は中国の事情を知る材料になるものと思いますし、他の日本側の報告内容やコメントも両国を対比して理解することに資するものと思います。
実施の事務にかかる業務の一端に関与している立場として、報告やコメントを担当するのみならず、本書に収録するための執筆に到るまでご負担下さった方々、そして通訳および翻訳を担当された方々(何琳氏、方海日氏、肖萍氏)には重ねて御礼を申し上げます。また、学内の事務スタッフの方々、オンラインでの運営を補助して下さった大学院生の方々にも大変お世話になり、厚く御礼を申し上げます。
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