後藤昭編集代表『裁判員時代の刑事証拠法』が日本評論社から刊行されました。当初は後藤先生の古稀をお祝いする企画として私たちが後藤先生に提案したところ、後藤先生から「みなさんと一緒に研究したい」という提案があり、このような形の書籍になりました(その経緯をめぐる後藤先生の考えと私たちの思いも含めて、「はしがき」と「本書の刊行について」に簡潔に書かれています)。なお、本書には、研究者の方々のみならず、弁護士の方々にもご参加いただけました。後藤先生が刑事弁護の発展を考えてこられたことが、執筆メンバーにも現れているものと思います。充実した論攷が収録されているものと思いますので、是非ご覧くださいませ。
大学院で後藤先生の指導を受けていた共同編者の草稿と、現在海外の大学で教員をしている2名の草稿、そして後藤先生自身の草稿については、オンラインで勉強会を実施して意見交換をする機会を得ました(因みに、私が大学院にいたころの後藤ゼミでは、しばしば後藤先生自身も執筆中の論文等の報告をされていました。私も、自分の大学院のゼミではしばしば執筆中の論文等を報告するようにしています)。久々の大学院ゼミという趣きで、いろいろなことを思い出しました。
私は、「純粋補助事実と関連性」と題して、刑事公判廷における証人尋問の際に、性格証拠を用いて証人を弾劾することの可否を検討しました。
例えば、
・証人の証言に信用性がないことを証明するために、証人が公訴事実の事件とは別の重要な場面で嘘をついた事実を示して尋問することはできるか。
・性犯罪被害者たる証人の証言の信用性を弾劾するために、別の事件で被害者が美人局に関与した事実を示して尋問することはできるか。
・被告人質問の際に、検察官が「あなたは本件公訴事実を否認していますが、以前の起訴されたときにも、否認して有罪判決を宣告されていますね」と質問して、被告人の否認供述の信用性を弾劾することは許されるのか。
…といった問題を、アメリカ連邦証拠規則の枠組みを参照しつつ検討しました。日本には先行研究が十分に存在せず、私は証拠法についてきちんと比較法的分析をした経験に乏しいので、良い勉強の機会になりました。ご批判いただければ幸いです。
(2021年7月30日加筆)
0コメント