特集「法学のイントロダクション」

憲法学の領域で次々と研究業績をあげてらっしゃる大林啓吾先生と法学教室編集部による企画「法学のイントロダクション」に、民法を研究されている平野秀文先生とともに参加させていただきました。

私は、「I. なぜ法学を学ぶのか」を担当するとともに、「III. どうやって法学を学ぶのか」の中の刑事法部分を担当させていただきました。オンラインでの打合せで、企画内容についての意見交換や、個々の原稿についての意見交換をする機会もあり、いろいろと勉強になり、かつ私にとっては楽しい時間でした。その雰囲気も含めて伝わればと思っています。

予備試験が存在する中で、さらに法曹コースが設置され、結果的には、早く法曹になりたいというニーズに対して、複数の制度的な選択肢が設けられた形になっています。そんな中で、「資格試験に合格できるような勉強をしたい」「資格試験に直結しない『無駄』な勉強は避けたい」という雰囲気がより一層強まるのではないか――という気もしています。受験生がそのように思うことは、短いスパンで考えれば、合理的なようにも思えます。しかし、長期的にみれば、視野を狭くするかも知れませんし、法学はもっと豊かで面白いかも知れないのにそのことに気づかずに通り過ぎてしまう可能性もあります。

せっかく様々な分野の研究者がいる大学で学ぶのであれば、いろいろな分野に触れて、視野を広く持つ機会も大切にしてはどうだろうか、そのことは法学を学ぶ際に、そして法曹として実務に取り組む際に、きっと有益なものになるのではないか――という思いを背景に抱きつつ、法学を学ぶことの意味・価値を私なりに思いを込めて「I. なぜ法学を学ぶのか」を書きました。「III. どうやって法学を学ぶのか」の刑事法部分も、刑法や刑事訴訟法、刑事政策の個々の解釈論や政策論についての説明よりも前に、触れたり考えたりして欲しいことについて、若干のことを書きました。

私の担当部分について、共感していただけるか否かはさておき、平野先生による「II. 法学は何を学ぶ学問か」、大林先生による「IV. 法学の考え方を使う」や、両先生による「III. どうやって法学を学ぶのか」の憲法学や民事法学にかかわる部分は、とても面白かったです。

私の書いた箇所は、主として新1年生や新2年生などの法学部生を想定していますが、平野先生や大林先生が書かれた箇所は、より広く様々な人をも読まれうる内容だと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

  • なお、校正の段階で入院し、関係の方々にご迷惑をおかけしました。ご対応いただいたことに、重ねて御礼を申し上げます。

ちなみに、法学教室の「演習」では、『基本刑事訴訟法I・II』でお世話になった吉開多一先生が連載を担当されています。私も楽しみです。連載「事例で学ぶ刑事証拠法」もとても充実した内容ですし、学びが進むものと思います。