論文等:訴訟能力の有無に関する法的判断

石田倫識ほか編『大出良知・高田昭正・川崎英明・白取祐司先生古稀祝賀論文集――刑事法学と刑事弁護の協働と展望』(現代人文社、2020年)が刊行されました。古稀祝賀論文集では珍しいことだと思いますが、祝賀される4人の先生方の座談会と、季刊刑事弁護100号記念座談会も、収録されています。なぜ4人の先生方が一緒に祝賀されるのかは、前者の座談会を読めば、理解できるところだと思います。前者の座談会を読んだところ、断片的に私が耳にしてきたこと、知らなかったことをそれぞれ活字になっており、読んでいて、祝賀する立場なのにいろいろと更に教わっている心持ちで、これはこれで祝賀する側にとっても良い企画だなと思いました。そして、座談会を企画する先生方の行動力が、季刊刑事弁護の創刊につながったのだろうなと思うことしきりでした。

私は、刑訴法314条1項の公判手続を停止するか否かにかかわって、訴訟能力の有無を法的にどのような事情をどのように考慮して判断すべきかを執筆しました。

たまたま、訴訟能力の有無や公判手続の停止に関して、弁護士の方々から事件を持ってこられて相談された事案が3件ほどありました。その際に、訴訟能力の判断枠組みについて、リサーチしてお答えしたりしていたのですが、その過程で、白取先生が、論文や判例評釈等で、しばしば訴訟能力の問題を研究されていたので(その一つは、白取祐司『刑事訴訟法の理論と実務』(日本評論社)にも「訴訟能力とは何か」と題して収録されています)、論文を読む機会がありました。そこで、私なりの応答として書こうと思った次第です。日本の最高裁判例の分析だけで紙幅が尽きたので、それで形にしました(相談を受けた事件における意見書の内容も一部組み込みました)。もともと、本書が刑事法学と刑事弁護の協働がテーマだったので、具体的な事件を通じて考えたことを論文にしたという側面もあります。

学恩をお返しするというには、まだまだというところで面目なく、私の論文はともかくとして、本書には様々なテーマを使う論文が44本収録されていますから、(高価ではありますが)読んでいただければと思います。編集委員を担った先生方や、季刊刑事弁護100号刊行のころに4人の先生と同じく古稀を迎えた編集者の成澤さんにも、厚く御礼を申し上げます。

*収録された私の論文の脚注36が、なぜか消えています(初校~3校まではきちんと存在していました)。脚注36は、511頁の最下段において、「36 白取・前掲注2『理論と実務』162頁。」と明記されるはずでした。ここで訂正として掲げておきます。