一橋大の場合、ゼミは3年~4年の2年間にわたるとともに、卒業論文の提出が卒業のための必須要件とされている。しかも、ゼミを途中で変更することは、原則として認められないことになっている。
それゆえ、ゼミを選ぶときには、以下の点に留意していただけると良いのではないかと思う。
第1に、ゼミを見学したり、知己の先輩の性格などをみて、ゼミの先輩の雰囲気でゼミを決めようとするかもしれない。確かに、ゼミを見学し、あるいは先輩の性格をみて、同じようなゼミの雰囲気を期待して集まる次の学年の学生さんたちも、似た雰囲気のゼミを作り上げるかも知れない。
ただ、注意して欲しい。少なくとも私の経験上、ゼミの雰囲気は学年によって大きく異なる。特に、本学のように10人未満、5人未満のゼミが多い場合、その年度に集った学生さんたちの個性の影響はより大きく影響する。先輩たちの雰囲気は、あくまで先輩たちが作り上げたものであり、次の学年が同様の雰囲気になる保証はない。
第2に、ゼミの教員の性格でゼミを決めようとするかもしれない。確かに、2年間にわたり接する以上、どのような人柄かは重要な要素かもしれない。
ただ、これも把握するのは容易ではない。その教員が担当する少人数教育の講義に参加した経験がある場合は別として、その教員と学生さんの馬が合う保証はない。また、ときには教員がいろいろと考えた上で、教育方針を変える場合も絶無ではない。先輩が教員の人柄を評価していても、それは先輩とその教員の間が良好な/良好ではない関係であることを示してはいても、あなたとその教員の関係が同様のものになるという保証はない。
もう一度確認すると、ゼミにおいて2年間にわたって接し、しかも卒業論文を書くことをも必須とされている。そうだとすれば、ゼミを選ぶ際に第一に重視すべきは、「自分が関心を持っている分野か否か」だと思う。自分が関心を持っていれば、仮にゼミの雰囲気が期待通りのものにならなかったとしても、仮にゼミの教員との相性があまりよくなかったとしても、ゼミで何かを生み出し、得ようとする姿勢を保つことが比較的可能なのではないか。そのゼミが扱う内容に、関心を持っているということが、おそらくは学生さんの側でコントロールできる、もっとも有効なゼミ選択の要素なのだと思う。その分野に関心がないのに、惰性や周囲の友人の動向を重視してゼミを選ぶことは、あまりお勧めできない。
まだ勉強していない分野のゼミであれば、その分野の書籍を読んでみたり、関連する映画やドキュメンタリーがあればそれを観てみるのもよいと思う。先輩に聞くのであれば、そのゼミでどのような内容を扱っているのかを聞き、その内容に興味を持てそうかどうかを考えるとよいと思う。
「関心がある」ということは、その分野について、いろいろな文献を読み、調査することが苦痛ではなく、(可能であれば)さらにその分野について自ら進んで知りたい・考えたいと思えるということだろう。書籍やドキュメンタリ等を目にして、「なぜ」「どうして」と思い、その違和感を大切に考えたいと思えるならば、きっとその分野に関心を抱いているのだと思う。
刑事訴訟法は、多くの学生にとってはゼミを選ぶ前に履修する機会がないため、関心を持てるか否かを学生さんが自分自身で(可能な範囲で)確かめる方が、ゼミを始めてから後悔する可能性が低くなるだろう。関心がない分野で数万字の卒業論文を書くという事態は、避けて欲しいと思う。
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